【授業提案】狂言「鐘の音」を使ったオノマトペの授業記録
中級を学ぼう(前期)のように、オノマトペを取り上げている教科書は多いです。
実は狂言にも多くのオノマトペ(主に擬音語ですかね。)があります。
今回は狂言の演目「鐘の音」を使ったオノマトペ授業の導入を提案です。
今回は試験的に実際に行った私の授業記録を公開します。
私が実施したクラスは、
①初級前期②初級後期③初中級④中級前期⑤中級後期⑥中上級⑦上級前期⑧上級後期と分けた時の④中級前期クラス相当になります。
※途中で出てくる”PPT”はofficeのPowerPointのことです。PPTでなくても、Googleスライドでも絵でも何でもいいです。
※実際の授業記録ですので、教案に無い学生の突っ込みなども入っています。私はそれを使って授業を進めるタイプなので、今回は入れたままにしてみました。
これは私が行った授業の一部ですので、それぞれ改良していただければと思います。
私も反省点があったので、次回行う事があれば改良していくつもりです。
目次
狂言「鐘の音」について
簡単なあらすじになってしまいますが…。
主人は息子が成人するので、お祝いに黄金の飾りのついた太刀をプレゼントしたいと考え、召使の太郎冠者に鎌倉で「かねのね(金の値)」を聞いてくるよう言います。
太郎冠者は「かねのね(鐘の音)」だと思い、鎌倉のお寺を回って鐘を鳴らして聞き歩き、帰宅。主人にそれぞれのお寺の鐘の音を得意げに報告する…という。(笑)
たまに「太郎冠者って何ですか」と他の先生に聞かれるのですが、狂言を詳しく知りたい!とかでなければ「登場人物A」と思っていただければ大丈夫だと思います。(笑)
(こんなこと言ったら狂言好きに怒られそう)
ちなみに「登場人物B」に次郎冠者、「登場人物C」に三郎冠者…なんてのもいます。
A地点からB地点へ行くとき、太郎君が出発した五分後に次郎君が~…みたいな感じですかね。
一応、成人済み男性です。
【導入】
T:皆さんは、日本の伝統芸能を知っていますか。どんな伝統芸能を知っていますか。
S1:歌舞伎!
S2:舞!traditional japanese dance!(日舞のこと?)
T:おお、皆さんはもうすぐ日本へ来て一年ですから、詳しいですね。じゃあ、これは知っていますか。(PPTで狂言提示)
S:?
T:これは狂言です。歌舞伎と狂言は何が違いますか。
S1:歌舞伎はメイクします。みんな男。女の人も、男の人がします。
S2:狂言は髪、何もしません。
S3:家でします。家の屋根があります。
※ここで見て分かる歌舞伎と狂言の違いなどを確認して注意をひきます。狂言は約600~650年前、歌舞伎は約400年前という情報をこちらから提示。
T:そうですね、いろいろ違う所がありますね。では、言葉はどうですか。今、皆さんは日本語を勉強していますよね。勉強している日本語と、歌舞伎や狂言の日本語は、同じですか。
S1:違う!
S2:え、違う!?違いますか、先生!
T:お、S1さん詳しいですね。そうなんです。違うんです。伝統芸能は昔からあります。ですから、昔の言葉を話します。
S2:へ~。
S1:服も違います。着物。
T:そうそう。服も違いますね。今日学校へ来るとき、着物を着ている日本人を見ましたか?
S:いいえ(笑)
T:あまりいないですよね。歌舞伎と狂言は、今と少し違います。でも同じ所もありますよ。
S1:え~。
S2:先生毎日着物で学校きますか!?笑
T:着物は高いから買えません!!!着られません!笑皆さんは毎日この服を着て学校へ来ます。そして遅刻したら教室へ入るとき、これしますよね。(ドアノック)
S3:はい「失礼します。先生すみません、電車が遅いですから…。」
T:そうだ!昨日、S3さんは電車の遅延で遅刻しましたねww これ、「コンコン」って言いますね。
S:ノックノック!コンコン
T:コンコン。これは”オノマトペ”と言います。
S:オノマトペ…
※オノマトペはフランス語?だそうで、大体の学生には通じませんでした。なので、動物の鳴き声や雨の音などで理解してもらいました。
T:これがオノマトペですね。皆さんの国にもありますか。
S1:あります!
S2:先生、私の国ない!
T:ない国もあるんですね。日本にはオノマトペがあります。いつからあると思いますか。
S3:昨日!笑(昨日遅延で遅刻した人ww)
S2:昔!
S1:600年前!狂言!
※ここで勘のいい学生は、狂言や歌舞伎の年数を当てはめてきます
T:素晴らしい!そう!さっき、狂言は600年前にできたといいましたね。その狂言に、オノマトペが出てきます。…つまり?
S:600年前からあります!
【本題】
T:皆さん、600年前ですよ。信じられますか!?
S:信じませーーーん!!!嘘です~。
T:では、確かめましょう。これなんですか。(PPT:お寺の鐘)
S:temple bell
T:日本語で!笑 お寺のベル…鐘です。
S:かね~、お金~。
※お金と出てくれば、鐘の音のあらすじを簡単に話しても良いかもしれません
T:お金と鐘、似ていますね。これは鐘。今からこの人(野村萬斎さん、このクラスはみんな知っています。)が四つの鐘の音をオノマトペで言います。どの鐘だと思いますか。聞いて、考えてください。
良い鐘 うすい鐘 われ鐘 普通の鐘 ☞ プリント配布・軽く意味を確認
※われ鐘は、破れ鐘と書きます。割れてひびの入った金のことです。
実際に音を聞いて、プリントに記入します。
ここではNHKで提供されている和泉流野村萬斎さんの狂言の映像を見せました。
ネット環境とAdobeflashがあればPCで表示できると思います。(NHK:鐘の音)
※絶対に動画の複製・転写はしないでください。
四つの鐘を鳴らすので、①~④と答えに記入してもらいます。
教師側では鐘の音の一つ一つで映像を止め、「これが一番です。じゃ~んもんもんもんも…wwどの鐘だと思いますか。」等、声掛けや板書すると分かりやすいかと思います。
ちなみに…
①ぢやんもんもんもんも~
☞じゃんもんもんもんも~かな。
②ぱーん!!
③じやぐわじやぐわじやぐわじやぐわじやぐわ~
☞じゃがじゃがじゃが?じゃがいも?(笑)
④こんもんもんもんも~
と言っています。NHKの動画ページの右にセリフは書き起こされているのでご覧ください。
【移行】
T:皆さんいくつ正解でしたか。S1:全部!
S2:0!
T:全部正解だった人もいますね。皆さんの国では鐘の音は何と言いますか?雨の音はどうですか?
※ここで教科書や実施プリントで取り上げられているオノマトペを例に出して、そのまま移行していきました。私は中級を学ぼう前期の4課プラスαへ移動しました。
私の記録
☞実際にこの授業を行ったとき、「かね、おかね~」と発言した学生がいたので授業後に鐘の音について軽く説明したのですが「ふ~ん」って感じだったので、授業内では特に質問がなければ飛ばしてもいいかもしれません。
説明まで行うのであれば、実際にその聞き間違えをして主人に怒られるところまで見ないと楽しくないと思うので…。
☞歌舞伎は知ってるけど狂言は知らないという学生が多かったので、割とすんなり授業に入れましたが、何も知らない学生だと伝統芸能の説明から入るため「オノマトペについて学ぶ」という意味で、効果的な授業は難しいかもしれません。
☞歌舞伎はわかるけど狂言は分からない…という学生が多かったので、なかなか狂言に食いついてくれない学生もいましたが、萬斎さんの紹介の時に「彼は有名な人ですよ。2020年のオリンピックの開会・閉会式のクリエイティブディレクターですよ(チーフ エグゼクティブ クリエーティブ ディレクターww)」と言ったら、一気に身近な人になったのか興味持って活動してくれました。
☞もともとこのクラスは私が週3教えており、学生それぞれの趣味(歌舞伎が好きな学生など)や特徴(知らないことを面白がれる人、好きなこと以外興味のない人)を知っていましたし、学生も私の趣味や野村萬斎さんファンであることも知っていてくれたので、かなり盛り上がる活動になりましたが、クラスの色で活動の活発度が変わる危険な賭けになるかもしれません。(笑)
☞導入までは盛り上がるのに、教科書に戻るとうなだれるこのクラスは本当に素直というか…活動のやりがいがあるクラスでした。ww
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参考資料
野村萬斎What is 狂言?
ややこしや―伝統芸能にふれてみよう (NHK Eテレ「にほんごであそぼ」)
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